西浦直亨選手をトレード? ~チーム編成から見るスワローズのショート事情~

NPB 東京ヤクルトスワローズ

2021年シーズンには30歳と、年齢的にはキャリアのピークに入っている西浦直亨選手。
しかし、あえてこの時期に西浦をトレードに出すことを提案する。
その理由はのちに述べていくが、まず断っておきたいのが、「トレード=不要」という認識がファンの間ではあるだろうが、そういう認識ではない。このタイミングで、出血覚悟で選手の入れ替えが必要だと考えるからだ。ハッキリ言って、西浦は2020年オフの現時点では、スワローズのレギュラーショート一番手だろう。それでもトレードする理由は次のような理由からだ。

1.故障

まずは故障の多さだ。
スワローズOBの池山隆寛氏は32歳でサードにコンバート。長年ショートでレギュラーとして出場し、それが主な原因かは確かではないが、アキレス腱を故障し、晩年はそれに悩まされた。ある雑誌では、93年時点でサードへのコンバートを直訴していたという記事もある。
同じくOBの宮本慎也氏は、38歳まで主にショートとして出場。比較的長い期間ショートのレギュラーを務めたが、守備力の高い選手だったので、年齢による運動量の衰えを技術でカバー出来たのではないか。しかし、それでもサードにコンバートしている。またコンバートのタイミングでは、トレードで日本ハムから川島慶三を獲得しショートで起用している。
これらは、神宮球場が人工芝の球場というのが理由としてあるかもしれない。人工芝は膝に負担がかかるというのが定説になっている。中でもショートというポジションは内野の花形ともされているが、打球処理の回数が多く、その分体に負担のかかるポジションだ。そのためかMLBでは、球場は天然芝の球場が多く、外野手でさえ人工芝の球場は選手に敬遠されるほどだ。
西浦選手は故障が多く、2018年には138試合に出場し、10本塁打とショートのレギュラーとして活躍したが、翌2019年、そして2020年は再び故障離脱でレギュラーのポジションを掴み損ねた。守備力も高く、パンチ力もある選手だが、守備の要となるショートにおいてレギュラーが固定出来ないことは、チーム成績に直結する。その点は、2019年にヘッドコーチを務めた宮本氏も「西浦の離脱が痛かった」と述べたことからも分かる。しかし突出した守備力を持っていた宮本氏に対し、同等の守備力を持っていない西浦を、宮本氏と同じ年齢までショートを守らせることは考えにくい。
このことから、35歳前後をメドに、サードにコンバートしていく事が好ましいと思う。しかし、2021年のスワローズのサードは、新外国人選手のオスーナが守る可能性が高く、さらに将来的な「サード・村上」の可能性が完全に消えたわけではない。また、守備より打撃が優先されるポジションでもあるので、打撃でも2018年以上の成績が求められる。

2.重複する三遊間の選手

2020年は廣岡大志がショート、サードの他に、セカンド、レフト、ライトと、5つのポジションで出場した。このことからショートのライバルとされてきた廣岡は来シーズン「ユーティリティー」というポジションに収まるかもしれない。しかし、2019年のドラフトで長岡秀樹武岡龍世という2人の高卒ショートを獲得し、さらに今年のドラフトでは元山飛優(東北福祉大)というショートも指名、また捕手指名の内山壮真(星陵高)もショートの可能性もあるという。このドラフト戦略には「山田哲人FA流出の可能性」という側面もあるが、このことから、チームはショートというポジションに西浦を固定していない。もしくは既に西浦の次のショートの育成を始めていることが伺える。(これは廣岡のコンバートにも繋がっていると思われる)さらに太田賢吾吉田大成奥村展征など、三遊間に係わってくる選手は多い。
廣岡選手に関する記事はこちら→山田哲人2世と呼ばれた男。 スワローズ・廣岡大志はこのまま埋もれてしまうのか?

3.チームのピーク

現在スワローズは2年連続セ・リーグ最下位で、特に投手陣の整備が急務であることは野球ファンなら周知の事実と言っていいだろう。リリーフ陣はタイトルも獲得した清水の躍進、守護神・石山の残留、他にも梅野、長谷川、寺島(先発転向の可能性あり)と若手の頭数も揃ってきた。となると先発陣。特に奥川の成長にかかってくる。
ルーキーの奥川はドラフト時には即戦力と言われたが、故障などもあり1軍デビューは神宮最終戦まで遅れた。しかし、その分2軍で故障と向き合いながら、じっくりと育成出来たのではないか。しかし昨シーズンの2軍での起用法を見ると、2021年からその故障をケアしながら1年間1軍のローテーションに入れる可能性は低いと考える。そして私は奥川育成プランをこう仮定する。

・【2年目(2021年)】中10日(一度抹消する)でのローテーション
・【3年目(2022年)】球数制限付き(100球前後)の中6日ローテーション
・【4年目(2023年)】リミット無し。完全にローテーション入り

鳴り物入りで入団し、あの田中将大選手とも比較される逸材である選手を、1年目からの故障で育成に慎重になっている(ならざるを得ない)のは見えている。その選手を実力があるにせよ、いきなり通常通りローテーションに入れることは考えにくい。早くて2022年、慎重に育成して2023年。この年に優勝争いに本格的に参戦出来る、チームのピークの始まりが訪れると予想する。

そうなった時に、2023年には32歳。故障がちな体質に、選手としてもピークから緩やかに下降してくる年齢に差し掛かっているので「ショートとして」レギュラーを張るにはチームのピークとはマッチしていないように思える。
山田がFAを行使せずに残留し7年契約を交わした。奥川が本格的にローテ入りする2023年から山田をキープ出来る2027年まで。この5年間がスワローズの本格的な勝負モードでこの間に毎年優勝争いをし、更に世代交代を進めるための準備(育成プラン)を確立させなければならない。そうなると健康状態や、今後サードに村上や外国人選手が入る事も考えると、23~27年(32~36歳)の期間、常にショートのレギュラーでいることは考えにくい。そしてその時期にショートの世代交代に失敗すれば、チームのピークを失ってしまう可能性もある。
チームのピークを担うであろうU25の選手に関してはこちら→スワローズの未来予想図。~低迷するスワローズのU25を考察する~

4.選手のピークとスワローズの投手陣

プロ野球選手であるうちは当然、何度も優勝を味わいたいのではないか。そして当然レギュラーとして毎日活躍したいだろう。なので年齢的にピークに入ってきている今、現在優勝争いに絡めるチーム、三遊間に不安のあるチームに西浦をトレードするのも一つのプランだと思う。そして若手の数は揃ってきたものの、まだ未知数な投手陣を厚くしたい。
もちろんスワローズにいても活躍出来るだろう。しかし野手は外国人選手の獲得もあり層は厚くなってきたが、投手陣を考えると余程の奮起がなければ優勝争いに食い込むのは難しいと感じる。そう考えると、出血覚悟で投手陣の再建を目指すのも編成プランの1つではないか。

結論

西浦はスワローズのレギュラーショート一番手だが、そこを欠いてでもチームのピークを考慮し、投手陣を強化したい。
西浦はスワローズに必要な選手だ。だが、次々とドラフトでショートの選手を獲得し、チーム内でも三遊間の選手も多いことからチームのピークにマッチしないと思い、トレードに出しても良いのではと考えた。最初にも述べたが、「トレード=不要」というネガティブな意味合いで今回の記事を書いているわけではない。リスクを冒してでも投手陣の整備が重要だと考えたからだ。また、若手内野手が多いので、「育成」にシフトしても良い時期ではないか。
「それなりの選手」を対価にしても「それなりの選手」しか得られない。ならば、レギュラークラスの選手を出してでも、1軍クラスの投手、もしくは若手有望株を獲得し、将来に備えることも必要ではないだろうか。
もちろん、今年、投手陣が躍進し、一気に優勝争いできるチームに変貌するかもしれない。そうなれば西浦はチームの中心にいることが出来るだろう。そしてそのチーム状態が続けばレギュラークラスを放出する必要はない。だが首脳陣や球団は現状をどう判断しているだろうか?
2023年からが勝負モードと書いたが、投手陣が整備できれば奥川の成長を待たずとも勝負モードに転じられる。山田・村上が揃い、青木・坂口もまだピークアウトしていない。大物の新外国人選手も獲得し、塩見・山﨑の成長も見える。野手陣の状態が良いからこそチームのピークを前倒し出来る可能性があるし、2020年代は黄金時代を築けるかもしれない。その時にショートを誰に任せているだろうか。
いずれにせよ投手陣。今年の投手陣の出来が、来年以降の野手陣の編成にも影響を及ぼす可能性は十分にある。