スワローズの未来予想図。~低迷するスワローズのU25を考察する~

NPB 東京ヤクルトスワローズ

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先日、2020年のドラフト会議が行われ、我がスワローズにも10人の選手の新入団選手を獲得することになった。
そして今オフ、スワローズ史上最大の問題であったと言っても過言ではない、主力3選手のFA権問題。エースの小川、クローザーの石山、そして中心選手の山田が抜ける可能性があった今オフ。結果次第ではチームの崩壊にも繋がる恐れがあったが、結果はある意味予想外の全員残留と、いい意味でファンの予想を大きく裏切ってくれた。
しかし選手の残留は補強ではなく、あくまで現状維持。2019、20年と2年連続最下位となり、優勝を狙えるチームになるための課題はまだ多い。ただ、今回の主力流出を阻止出来たおかげで、近い将来に優勝を狙えるチーム編成が出来るのではないかと思う。その理由をスワローズのU25の選手から考察していく。

2020年のスワローズ

2020年シーズンはエスコバー選手を補強、ドラフトでは上位4人を投手指名(内3人は大卒で即戦力との触れ込み)に費やすなど、明らかに勝ちを意識した編成だと感じられた。しかし、チームとしての結果は出せなかった。長い目で見た時に、いかに低迷期をなくすか(短くするか)、ということはどのチームも課題の一つだと思う。
NPBは球団数が少ないためか、あまり長期的な視野でチーム作りをしていないように見える。スワローズは2015年には優勝したものの、その後毎年安定して勝てていないのは、悪く言えば毎年突貫工事の補強のみで、長期的に勝てるチーム作りをしていないからではないだろうか?
そこで、(気が早いかもしれないが)数年後の黄金期を見据え、その時チームで担うであろう現在U25の選手たちがどのような状況下にいるか、検証し未来予想図を作りたいと思う。

2020年のU25の選手
(2020年ドラフト選手は除く)


投手が外国人選手を除く34人中、半数近い16人が25歳以下で構成されてた。

~投手~
ルーキーの吉田大喜(23)は、勝ち星は少ないもののローテーション入り、2018年のドラフト1位清水(24)は今年セットアッパーに定着と、戦力になった。
また、寺島(22)は定着とはいかないもののリリーフで一定の成績を残し、ソフトバンクから移籍の長谷川(22)も防御率は悪いながら、開幕から1軍に定着し、高い奪三振率を残している。2019年既に68試合に登板している梅野(21)は今年の登板数は減っているものの、U25の中では早くも実績を残している投手の一人だ。
エース候補として期待されている高橋(23)は良いときと悪いときの差が激しく、まだローテーション投手とは呼べないが、投球回と同数の三振を奪える先発左腕は貴重だ。まだ若く、素材としても球界トップクラスだと思うので、今季以降の成長に期待が持てる。

~捕手~
怪我人が続出した捕手陣では、古賀(22)がキャリアハイの出場試合数を記録したが、1軍の壁は厚く、定着には至らなかった。しかし2軍では打率.378出塁率.412の好成績。打てる捕手へ着実に成長してきている。1軍では打撃で苦しんだが、今後はその辺りも課題となってくるのではないか。また育成の内山(24)も打率.274出塁率.351と捕手としては高水準。来シーズン中への支配下契約を勝ち取りたいところだ。

~内野手~
内野手では、村上(20)が早くも中心選手に成長。全試合4番で出場、三冠王も狙える成績を残し、今後チームのコアプレイヤーとなることは間違いない。
二遊間は、山田の不調の間に宮本(25)が台頭し、左打の内野手では一歩リードした感がある。武岡(19)は高卒ルーキーながら巨人・菅野からプロ初安打を記録。しかし同じくルーキーでポジションを争う長岡(19)とはファームの成績はほぼ同数。これからのポジション争いが期待される。また春先は好調でレギュラー候補だった吉田大成はシーズン中は低迷。2軍でも2割中盤の打率に低迷している。
そして去年10本塁打を放ち、今シーズンの本格ブレイクが期待された廣岡(23)。出たり出なかったりが続いたせいか、なかなか調子が上がらなかったが、最終的には8本塁打を放ちった。また出場機会のためか、セカンド、レフト、ライトでの出場もありユーティリティー性がついた。エスコバーが退団し、西浦も絶対的レギュラーまでには至ってないので、来シーズンのレギュラー奪取に期待したい。

~外野手~
外野は昨年高卒で1軍デビューした濱田(20)が3本塁打を記録し、レギュラー奪取とまではいかなくとも、来年以降に期待の持てる結果を残した。また、2019年ルーキーながら5本塁打の中山(24)は、昇格まで時間のかかったものの、4本塁打を放つなど片鱗を見せた。渡邉(23)はシーズン序盤から代走・守備固めなどで起用され、打席は少ないながらも出場試合はキャリアハイを記録した。また2軍ながら打率.291出塁率.344と安定感を増した。

U25予想スタメン

  • 8濱田(19)
  • 5宮本(25)
  • 6廣岡(23)
  • 3村上(20)
  • 7中山(24)
  • 9渡邉(23)
  • 4長岡・武岡(19)
  • 2古賀(21)
  • 投手

次のチームの中心は間違いなく村上だと思う。そこに昨年10本塁打の廣岡。この二人は守備位置に不確定要素があるが現状このようにした。
ただ廣岡は前述のようにユーティリティー性が出てきたので、どのポジションも無難にこなせる様になれば打線のバリエーションも増える。その廣岡と長打のある中山が村上をフォローする形だ。

1番には今年も1軍で打っている濱田。下位には大味だが長打も打て足もある渡邉。古賀は長打力はないものの、2軍で残してる打撃結果に少しでも近づければ正捕手に近づける。昨年オフの台湾Wリーグでは盗塁阻止率.800を記録するなど強肩も魅力だ。
セカンドは今年の高卒のどちらかがと予想したが、2019年でキャリアハイの太田。同じく2019年に自己最多の74試合出場に初本塁打を記録するなど成長を見せた奥村。今年のオープン戦で結果を残した吉田。と、近いタイプの選手でライバルは多いので、早い時期に抜け出せるかがポイントになるのではないか。

U25投手陣予想
先発

  • 奥川(19)
  • 市川(19)
  • 金久保(20)
  • 吉田(22)
  • 大西(23)
  • 高橋(23)

先発はチームどころか球界を背負える逸材の奥川が中心。それに左のエース候補・高橋、今年ローテに入っている吉田。となかなか強力な先発陣になる。ただ、故障のリスクのある奥川の本格的なローテ―ション入りはまだ先になると思うので、その間に吉田や高橋が先発の軸となれるようにしたい。

中継ぎ

  • 鈴木(20)
  • 長谷川(21)
  • 寺島(22)
  • 久保(24)
  • 今野(25)
  • 蔵本(25)

抑え

  • 梅野(21)
  • 清水(24)

リリーフも清水がセットアップに定着し、数年後、梅野とのクローザー争いが見込めるだろう。左は三振も取れる長谷川に、2軍では安定している久保がメインになってくれるのではないだろうか。個人的には先発で見たい気もするが、今年リリーフの寺島はこのままのポジションとした。このようにリリーフは若くして既に実績が出てきている選手もいるので、先発がまだ不安定な反面、ある程度計算が経つのは心強い点だ。

結論と課題

投打に球界を代表する選手が現れ、チームの柱となって黄金時代が訪れるでしょう。
と、いうと胡散臭い占いみたいだが…打線は村上を中心に長打を打てる廣岡・中山が中軸となって濱田・宮本がかき回す。投手は奥川・高橋・吉田の三本柱。リリーフは長谷川―梅野―清水の方程式。理想かもしれないが、その片鱗が少し見えてきたと思うので5年後のチームにはかなりの期待が持てる。

その為には、チームの現状を見極めたマネジメントが重要になる。大きく分けたら「育成」なのか「勝負」なのか。それによってドラフト、トレード、FA、外国人選手、マネジメントは変わってくる。

個人的には2021年は「育成期」から「勝負モード」への転換期。どちらかというと、やや育成寄りに思える。もっと細かく言えば野手陣は「成熟期」、投手陣の「育成期」ではないか。なので、来シーズンの投手陣の成長次第で「勝負モード」にも突入出来る時期だと考えられる。ただ、投手陣は全体的にも安定感のある先発が小川くらいなので、その点を考えると、個人的には数年後の本格的な「勝負モード」に備え、トレードでU25の投手の数を増やすべきだと感じる。

今いるU25の選手たちが今後チームの層を厚くし、FA、トレード、外国人で外堀を埋めていく。簡単に言うと生え抜き選手を中心に育成し、足りない部分を補強していき、このサイクルが確立する。当たり前の考えだが、そうすれば行き当たりバッタリなドラフトや補強ではなく、先を見据えたドラフトが可能になり、足りない部分には資金をつぎ込んでFAの選手を獲得する。(「足りない部分を補強」することは必須であると考える)そういった、勝ちながら先を見据えたチーム編成が出来てくるのではないか。

その為に、現状はU25の戦力を育成する時期であると思う。なので、まだ日本では否定的な意味合いにも取られるトレードも、チーム編成を考え、時には積極的に行っていくことも必要だ。特に現状の投手陣は全体的にも安定感のある選手(特に先発)が少ないので、その点を考えると、レギュラー格もしくは、左打の内野手が飽和状態なので、それらの選手とトレードで投手陣(特にU25の投手)を厚くするのも手だ。

とは言え。贔屓球団ゆえ、少し大げさな表現かもしれないが、少しづつ黄金時代への準備が進んできたと感じる。課題はやはり先発投手。2021年シーズンは先発投手の育成が、今後を左右するといっても良いのではないか。言い換えれば、先発投手陣が整備出来れば、一気に黄金時代へ突入する可能性も十分にあり得る。

2020年のドラフトでは1位に大学屈指の本格派右腕、木澤投手(慶応大)、2位に無敗の男、山野投手(東北福祉大)を獲得し、今年も課題の投手陣の整備に余念がない。去年のドラフトに続き、非常に楽しみな投手が加わった。また、2軍でも育成コーチが新設され、育成面での改革にも着手し始めた。新人選手も加え、若手選手はどう成長を見せるのか?投手陣の出来が非常に重要な意味合いを持つ2021年。今からどんなシーズンになるか非常に楽しみだ。