タンザニア・タイガース・ベースボールクラブ選手名鑑。

タンザニア球界 タンザニア野球

タンザニア野球の歩み

2012年に産声をあげたタンザニア野球は、タンザニア甲子園を中心とし、10年間活動が行われてきました。しかし、タンザニア甲子園大会には、主に学生の大会という事で、年齢制限が20歳までと定められています(しかし、その場で例外が適応されることもある)。そのため、稀に行われる国際大会に出場するものの、20歳を超えた野球選手は、練習はする事が出来ても、タンザニア甲子園のように真剣勝負が出来るような試合環境がなく、彼らの野球への情熱は宙ぶらりんのままでした。
そこから誕生したのがタンザニア・ベースボール・リーグTBL)構想です。
昨年からリーグ発足への話し合いが持たれ、今年2023年4月タイガースドラゴンズファイターズジャイアンツによる4チームで、念願のリーグ戦が開幕する事となりました。

タイガース・ベースボールクラブ

TBL構想から生まれた4チームの内の1つ。それがタイガースベースボールクラブです。
タイガースに限らず、他の3チームも全て、日本のNPBのチーム名からそれそれ好きなチーム名をチョイスしております。

タイガースは2022年2月より本格始動。
この1年、様々な問題を抱える中、リーグの開幕を信じて練習を続けてきました。その結果が2月に行われたスワヒリベースボールカップSBC)です。SBCは選手たちが自ら企画したカップ戦で、優勝チームにはタンザニアの伝統にのっとりヤギが贈られます(タンザニアでヤギ肉は高級品で、結婚式などでも丸焼きで振舞われたりします)。
そのカップ戦では初戦のドラゴンズ戦では、序盤からリードを許すも最終回で逆転し、11-9球団歴史上初勝利。続く決勝戦のファイターズ戦でも5-0と投打で相手を上回る事ができ、栄えある初代SBCチャンピオンに輝く事が出来ました。
4月から始まるリーグ戦でも、全員の力を合わせて、初代タンザニアチャンピオンを勝ち取りたいと思っています。
そんなタイガースの選手たちの選手名鑑(というほどの物ではないですが)を作成させていただきました。
リーグ戦のお供に、少しでもタイガースの選手を知っていただけたら嬉しいです。

※ポジションはメインポジション毎に分類しております。

投手

イブラ投手・外野手
ベースボール・モンスターの異名で投打トップレベルの能力を持つ、タンザニアの大谷翔平。オリンピック予選でも代表に選ばれ、アリと共にチームのコアである。長身から放たれるカーブは右打者がのけ反る程落差があり、フォーシームとのコンビネーションが決まれば打つのは容易ではない。また、鍛え上げた上半身から放たれる打球には、恐怖さえ覚える。
一方でギャグのセンスはチームメイトからの評価も今ひとつ。好きな選手は自身のタイプとはまるで違うMLBカブスやKBOでもプレーしたアディソン・ラッセル。

ジョージ投手・内野手
安定感バツグンの投手でイブラからエースの座を奪いつつある。身長は低いが125km前後のフォーシームのコマンドは高く、加えてカーブやスライダーも使う(本人談)。
スワヒリベースボールカップ決勝では、タンザニア甲子園で優勝した南スーダンと接戦を演じたメンバーが中心のファイターズ相手に、5回シャットアウトで胴上げ投手に。

エイドリアン投手・外野手
アメリカ出身でチーム唯一の助っ人外国人選手。投手&外野手としてチームをプレーで支える。
スワヒリベースボールカップでは決勝タイムリーの後マウンドに上がりラストイニングをピシャリ。
ボルティモア出身のオリオールズファンで、好きな選手はNPB・オリックスでもプレーしたアダム・ジョーンズ。Adrianの発音が意外と難しく、呼んでも一発で気づいてもらえない事が多々ある。

捕手

シセ捕手・二塁手
タンザニア野球創成期知る「パイオニアーズ」の1人。
バク宙を軽々こなす身体能力と強肩、高いリーダーシップも兼ね備えるチームの要。マスクを被らない時はセカンドも守る。
また、シンガーソングライターとしての一面も持ち、楽曲はウェブサイトから視聴可能。口癖は日本語で「問題ない!」

ネイサン投手・外野手
チーム1のお調子者。プレーはまだ荒削りだが、バズーカと呼ばれる程の強肩と天性のバッティングセンスが光る。
試しにマウンドから投げた球が平均125km越え(タンザニア最速)Max138km(誤計測?)を記録し投手挑戦が決定。
大学で日本語を専攻し、覚えた言葉は「ご機嫌いかがですか?」
キャッチャーなのにサインプレーが一向に覚えられないのが難点。

内野手

フェイサル一塁手・三塁手
内野両コーナーを守る守備が売りの内野手。ハンドリングはチーム随一。緊急時にはキャッチャーも務めるユーティリティープレイヤー。ショートかセカンドは?の問には「左右の動きが苦手だからちょっと無理」
打撃が課題とイージーミスがたまに傷。

キドゥ一塁手
長打力が魅力のパワーヒッターでチーム1の巨漢。守備範囲は並だが、見た目以上に守備は上手く安定感がある。
スワヒリベースボールカップで2試合連続フルイニング出場の際に、コーチに感謝のメールを送るなど律儀な一面も。
平日には小学校で野球普及活動にも尽力。愛嬌のある風貌もありチームメイトには良くイジられているが、実は一児の父。

アリ遊撃手
多くの日本人も認める、タンザニアNo.1選手。2019年オリンピック予選では弱冠19歳にして代表キャプテンを務め、周囲からの尊敬も集めるその姿は、元ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターを彷彿とさせる。
小柄だが多くの人が一目見て「ずば抜けている」と評する守備に加え長打力も高く、来日時には初めて見る140kmの速球に一球でアジャストしたとの逸話もある。
実は侍ジャパン・栗山英樹監督と写真を撮った事がある。大ファンの中田翔選手が巨人移籍を聞いた際には「What!!!?」

ジョシュ二塁手
小柄で足の速い二塁手。バッティングにはやや苦戦しているように見られるが、バントなどの小技を覚えれば上位打線のセッターとして機能してくれるだろう。守備は深めに守るのが好み。
みんな呼ぶ時には「ジョシュァ」に近い形で発音するが表記はJoshらしい。

カリム二塁手・三塁手・投手
セカンドとサードを守る一方、昨年から挑戦している投手では、ツーシームが主体のタンザニアでは珍しいタイプ。
2月のスワヒリベースボールカップでの初登板時は、緊張から序盤は四球を連発したものの2回を投げノーヒット。
昨年10月に再会した前任コーチ曰く「見違える程上手くなった」インスタには自身の写真が多数アップされる。

ヨアキム三塁手・投手・外野手
ハイポテンショナルな期待の若手。特徴ある打撃フォームから繰り出される打球は、ラインドライブで広角に打ち分ける事ができ、長打も期待出来る。
投手としては改善点が多く残るが、伸び代は多く感じる。体の使い方を学べば選手として大きく飛躍出来るだろう。
非常に真面目な性格ながら、練習後には良くインスタ用の写真を求めて来るなど、最近の若者らしい一面も。

イマ三塁手
安定感抜群の守備力を誇る三塁手。スワヒリベースボールカップ決勝ではスタメン出場し、無失策で優勝に貢献。
同じメインポジションのヨアキムに、打撃でどこまで迫れるか。
練習前にはどんなに遠くにいても、近くまで来てシカモオ(スワヒリ語で目上の人への挨拶)と握手をしてくれる。

外野手

サダム外野手
野球を始めたばかりの素人だが、毎回熱心に練習に参加する努力の人。
2月に行われたスワヒリベースボールカップでは6番レフトでスタメン出場し、人生初の試合を経験。
今後も更に経験積み、外野のレギュラー争いに割って入れるか。

マガイワ外野手・投手
チーム、そして20歳以上の選手で唯一の左打選手。外野手としてだけでなく、投手としても登板する。
スピードはそれほどでもないが、コントロールで勝負するタイプも、スワヒリベースボールカップでは右肩痛で登板機会なし。
打席時のセーフティバントの指示には「セーフティバントって何ですか?」

ワヒード外野手
外野のレギュラー候補。勢いがない時に積極的にチームを鼓舞する、タイガースの盛り上げ隊長。コール&レスポンスが好み。
いつもテンション高めだが、コーチに対する受け答えは真面目。
事情はあるだろうが、もう少し練習に来て欲しい(笑)

アダム外野手
身体能力を活かした守備と強肩が売りの外野手。課題の打撃が改善されれば外野のレギュラーは確実か。
騒がしい選手が多いタイガースの中、性格は控えめ。
こちらも、もう少し練習に来て欲しい(笑)

本澤コーチの戦力分析

予想布陣

スタメン
1遊 アリ
2捕 シセ(ネイサン)
3中 エイドリアン(マガイワ)
4投 イブラ(ジョージ)
5左 ヨアキム(イブラ)
6右 ネイサン(ワヒード、アダム)
7一 キドゥ(フェイサル)
8二 カリム(ジョシュ)
9三 イマ(フェイサル)

投手陣
先発 
イブラ、ジョージ
中継ぎ
カリム、マガイワ、ヨアキム、ネイサン
抑え
エイドリアン

総合力では国内トップクラス。課題は外野手とアリのバックアップにリリーフ陣。
タンザニアの野球選手は他国と同様、仕事をしたり学校に通いながらプレーしているため、毎回試合に参加できるわけではない。また交通費の問題もあり、そういった事を踏まえると、上記ベストメンバーで臨める試合はほとんどないだろう。その為、バックアップメンバーの働きが重要になってくる。

打線は足と長打力も兼ね備えたアリがリードオフ。2番には同じく俊足で小技などの応用が効くシセを置く。
その二人を長打の期待出来るエイドリアンとイブラで返していく。イブラは地方の大学にいることもあり、毎週の参加が困難だと予想され、ヨアキム、ネイサンも参加頻度は不透明なので、その際はキドゥを繰り上げる。
イブラは降板後もラインナップに残したいので、その際にはレフトで起用し、ヨアキムをサードに移す。
代走や守備固めにはフェイサルがおり、終盤での出番が増えるだろう。また、左打ちのマガイワにも同様の役割が期待出来るのに加え、場面によっては代打の切り札としても期待している。この二人はフレキシブルにプレー出来ると思うので、毎試合ベンチにいたら心強い。
本来なら状況に応じた打撃も出来るアリを2,3番に置きたいが、1番打者タイプ、特に出塁してくれるタイプの選手がおらず、ベースランニングスキルも含めて彼に任せた方が得点力が上がると判断した。マガイワの打撃力が今より向上出来れば1番マガイワ、2番アリという布陣も試してみたい。

課題は外野手のやり繰りとアリのバックアップ
外野にはどうしても打撃優先かつ、降板後の投手を置く時もあるので、柔軟に対応する必要があるが、外野手で安心して守備を任せられるのがエイドリアンのみ。そのため、ワヒード、アダム、サダムの守備力向上は必須だ。また、絶対的レギュラーのアリが守るショートは、スキル野球IQともに有事の際にバックアップ出来る選手がおらず、その辺りの選手もシーズンを通して見極めていかなければならない。

投手陣は基本的に試合日は週1日のみなので、ダブルヘッダーの場合はイブラとジョージの2枚看板。実力的にはエイドリアンがエースかもしれないが、リーグの存在意義も考えタンザニア選手に先発を譲り、クローザーとして待機してもらうつもりだ。
リリーフにはカリム、マガイワ、ヨアキム、ネイサンと候補はいるが、マガイワやヨアキムは実戦から離れており、カリムは経験が浅く、ネイサンは未知数。SBCで初登板したカリムは序盤に練習通りの投球が出来ず、苦しんだ。
ジョージは安定感があり大事な試合は任せられるが、イブラも右肩痛があり、いずれにせよ先発が長いイニングを投げられないので、毎試合継投は必須。最悪の場合、投手経験のあるアリやシセを投入する事もある。従って、先発投手が苦しいと、SBC初戦のように大味な試合になってしまうだろう。

ただし総合力では他の3チームに比べ頭一つ抜けていると分析している。しかし一歩間違えれば負けてもおかしくないという試合は増えるだろう。ただ、この1年でどこよりも練習してきたチームはタイガースだと思っている。グラウンドが使えず、空き地のようなサッカー場で何か月も練習し、実戦的な練習は昨年末までほとんど出来なかったが、その分基礎的な練習を中心に行い、地盤は確実に強くなったと思う。まだタンザニアの試合ではエラーが多く、完封試合というのをほとんど見かけないが、SBCの決勝で完封出来たことは、この1年の地道な練習が結果として現れたと思っている。
初めてのリーグ戦。私自身も初めて本格的にチームを指揮するので(高校時代はプレーイングマネジャー)、不安も大きいが、SBCで優勝出来た事を自信に、チーム一丸となって、シーズン後にはチャンピオンとしての報告が出来るように、しっかり戦っていきたい。

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タンザニアで野球チームのコーチになりました。

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