妄想話。もしもWBCが1996年に開催されていたら。

国際大会 妄想WBC1996

※この話は妄想です。実際に起こった出来事ではございませんので、予めご了承ください。

1994年。

アメリカ・MLBは選手会のストライキにより、ワールドシリーズは中止。翌95年に開幕はしたものの、金持ち同士の争いと揶揄されたストライキにファンの野球離れは加速した。

そんな中、一人の男の出現がファンを再び球場に呼び戻した。
その男は日本人だった。そう、彼の名前は野茂英雄。日本人2人目のメジャーリーガーとしてデビューし、その独特なトルネード投法と落差の大きいフォークボールで次々と三振を奪い、オールスター戦に先発、新人王と最多奪三振のタイトルを獲得と大活躍した。そしてノモマニアという熱狂的なファンも生み出し、MLBの人気復活に大きく貢献した。

そんな日米の野茂人気に目を付けたMLBのコミッショナーは、これを機にMLBの人気復活と、さらなるファン獲得を目論んで、プロ選手による初の野球世界大会World Baseball Classic通称WBCの開催を発表、世界の野球界を騒然とさせた。

そして開催は1996年3月ロサンゼルスサンディエゴで行われることが決まり、さらに招待国には日本が、いの一番に発表された。これは野茂ありきの招待で、野茂対アメリカ代表を見せたいがための策略だった。さらに第2の野茂を発掘し、MLBに呼びたいというショーケース的な目的もあった。

初めての開催される世界大会に様な疑問を抱きながら大会出場を表明した日本は、さっそくWBC代表選考委員会を立ち上げ、チーム作りに入った。しかしアトランタオリンピックを夏に控えていたため、経験を積ませるためオリンピック候補を中心に組んでいくべきだという声があがった。前回のバルセロナが銅メダルだったこともあり、今回は何としてでも金メダルを獲りたい!そんな野球界の悲願もあり、世論も徐々にオリンピックに目を向けるべきとの意見が大きくなった。まだ名もない野球の世界大会より4年に1度の世界最大のスポーツの祭典、オリンピックの金メダルが重要視されるのは当然のことだった。

日本がアマチュア中心のチーム作りをしていることを知ったMLBコミッショナーは、これでは興行が上手くいかくなることを懸念し、次なる一手を打った。そしてアメリカの代表監督が発表された。

「日本の息子である野茂と戦えることを、心から楽しみにしている。」そう発言したのは監督としてワールドシリーズ制覇も経験し、95年もロサンゼルス・ドジャースを地区優勝に導いた名将・トミー・ラソーダ。そう、ラソーダはドジャースで野茂の監督でもある。そんなラソーダからのラブコールに、少なくとも野茂は出場してくるだろうと踏んでいた。そしてラソーダ自身も密かに、野茂に直接参加を呼び掛けていた。さらにラソーダは、ドジャースの選手が各国の代表に選出された場合、喜んで選手を送り出すことを表明したのだ。
さらにアメリカ代表のロースター第1号選手としてボストン・レッドソックスロジャー・クレメンスの代表入りが発表された。そして彼は記者会見でこう言い放った。「誰も我々は倒せない」

そんな時、日本でもある若手選手の発言が波紋を広げていた「オリンピックはあくまでアマチュアの大会。自分はプロ」
そう発言したのはオリックス・ブルーウェーブの若きスター・イチローだ。この時22歳にして2度目のシーズンMVPを受賞し、早くも日本を代表する選手へと成長したが、わずか9年後にMLB史上最多のシーズン262安打の記録を打ち立てるなど、誰も知る由はなかった。
そしてオリンピックの川島勝司監督がWBCでの監督就任が決まりかけている中、「WBCはオリンピックの調整の場ではない。」と発言。また、クレメンスが出場を表明しているアメリカにも触れ「(日本は)本気で最強チームを作ろうとしているとは思えない」と言い、まだ影響力が今ほどなかったイチローは非難を浴びることになる。だが、この発言に心を動かされた人物がいた。

「ミスター、代表監督へ逆オファー!」

なんと現役監督であるミスター巨人、いや、ミスタープロ野球である長嶋茂雄監督がイチローの発言を聞き、代表監督に名乗りを上げたのだ。そして野茂とイチローに一緒にアメリカを倒そう!とラブコール。これを機に世論は一気に最強ジャパン設立へ加速していった。

それから数日後、MLBからWBCへの招待国が、アメリカ、日本に加え、プエルトリコ、ベネズエラ、ドミニカ、韓国、ヨーロッパ選抜、そしてキューバとなることが発表された。

アマチュア最強国と名高いキューバが、政治的な垣根を越え、金属バットを木製に持ち替え、メジャー軍団と初めて真剣勝負することとなった。そして、アメリカ代表に、日本でも野茂の女房役として人気の高いマイク・ピアザが選ばれたことが明らかになった。これで野茂対ピアザの夢の対決が見られると、日本でも盛り上がりを見せるようになった。

そして日本も40人の予備ロースターを作るべく、人選にあたっていた。長嶋監督の就任や、世論の盛り上がりを受けて、プロ選手も出場を希望する選手が増えていた。中でもロッテの伊良部やオリックスの長谷川の熱意は凄く、関係者を驚かせた。
こうして紆余曲折ありながらも、初のオールプロによる日本代表のロースターが発表された。

ヘッドコーチに盟友・王貞治を指名「ワンちゃん、一緒にアメリカ来てくれない?心細いよぉー。」「もぉーチョーさんの頼みなら断れないよー」などといった会話が交わされたかは分からないが、アメリカでの知名度は抜群の王がヘッドコーチに就任したことはアメリカでも話題になった。

そしてもう一人、ある人物に声をかけた「そもそもなんでワシが監督じゃないんだ?日本一の監督だぞ…日本一になった監督が代表監督じゃないなんて日本代表なんて言えるのか?どうせワシは月見草、いつまでたっても王長嶋の引き立て役や…」とかなんとかボヤきながら渋々(内心は嬉しく?)代表の作戦コーチに野村克也が就任するというサプライズ人事が発表された。

また、長嶋監督は代表チームに「侍ジャパン」と愛称を付け、チーム全体、国民全体で結束力を強めたいという願いだった。

国民のムードも一気に高まり、ついに、渡米の時。
様々な思いを胸に、真の野球世界一を決めるべく、日本代表は海を渡った。

ロースター

投手

野茂英雄(ドジャース) 13勝6敗236奪三振 2.54 新人王 最多奪三振
斎藤雅樹(読売) 18勝10敗187奪三振 2.70 最多勝 最多奪三振 ベスト9 Gグラブ
石井一久(ヤクルト) 13勝4敗1S159奪三振 2.76 最高勝率
高津臣吾(ヤクルト) 1勝3敗28S36奪三振 2.61
佐々岡真司(広島東洋) 7勝7敗17S110奪三振 3.05
佐々木主浩(横浜) 7勝2敗32S78奪三振 1.75 最優秀救援
盛田幸希(横浜)8勝4敗5S60奪三振 1.97
今中慎二(中日) 12勝9敗150奪三振 3.29
川尻哲郎(阪神) 8勝11敗105奪三振 3.10
平井正史(オリックス) 15勝5敗27S82奪三振 2.32 新人王 最優秀救援
野田浩司(オリックス) 10勝7敗208奪三振 3.08
伊良部秀輝(千葉ロッテ) 11勝11敗239奪三振 2.53 最多奪三振 最優秀防御率 ベスト9
小宮山悟(千葉ロッテ) 11勝4敗169奪三振 2.60
工藤公康(福岡ダイエー) 12勝5敗138奪三振 3.64 Gグラブ

捕手

古田敦也(ヤクルト) .294 21本76打点6盗塁 ベスト9 Gグラブ
伊東勤(西武) .246 6本43打点9盗塁
中島聡(オリックス) .267 3本33打点0盗塁 ベスト9

内野手

野村謙二郎(広島東洋) .315 32本75打点30盗塁 最多安打 ベスト9 Gグラブ
江藤智(広島東洋) .286 39本108打点14盗塁 本塁打王 打点王
立浪和義(中日) .301 11本53打点10盗塁 Gグラブ
清原和博(西武) .245 25本64打点2盗塁
小久保裕紀(福岡ダイエー) .286 28本76打点14盗塁 本塁打王 ベスト9 Gグラブ
田中幸雄(日本ハム) .291 25本80打点1盗塁 打点王 ベスト9 Gグラブ

外野手

飯田哲也(ヤクルト) .253 7本31打点35盗塁 Gグラブ
緒方孝市(広島東洋) .316 10本43打点47盗塁 Gグラブ
松井秀喜(読売) .283 22本80打点 9盗塁 ベスト9
イチロー(オリックス) .342 25本80打点49盗塁 MVP 首位打者 打点王 盗塁王 最多安打 最高出塁率 ベスト9 Gグラブ
秋山幸二(福岡ダイエー) .267 21本66打点13盗塁 Gグラブ

リザーブロースター

山部太(ヤクルト)16勝7敗 144奪三振 3.83
山内泰幸(広島東洋)14勝10敗 123奪三振 3.03 新人王
長谷川滋利(オリックス)12勝7敗 91奪三振 2.89
鈴木平(オリックス)2勝4敗3S 53奪三振 1.83
村田真一(読売) .265 13本38打点 0盗塁
池山隆寛(ヤクルト).263 19本70打点8盗塁
土橋勝征(ヤクルト).281 9本54打点7盗塁
石井琢朗(横浜) .309 2本41打点 23盗塁 Gグラブ
初芝清(千葉ロッテ).301 25本80打点1盗塁 打点王 ベスト9
金本知憲(広島東洋).274 24本67打点14盗塁 ベスト9
田口壮(オリックス).246 9本61打点14盗塁 Gグラブ
佐々木誠(西武) .271 17本55打点18盗塁 ベスト9

編集後記

今回は「もしもWBCが1996年に開催されていたら」というテーマで書いたネタ記事でした。
96年は僕が野球をある程度理解し、選手もたくさん覚えてきた年頃で、贔屓のスワローズも前年に日本一となり、黄金時代真っ盛りだったこともあり、とても思い出深いシーズンでした。

選手の選出は相変わらず好みもありますが、「初めてオールプロで臨む大会」「長嶋茂雄監督」という設定から、長嶋監督ならオールスターでアメリカと戦いたい!オールスターを揃えて日本を盛り上げたい!と考えるんじゃないかなーと思い、役割分担というより、単純にオールスターメンバーになるような構成にしました。当時の選手を思い出しながらの選出は結構迷いましたが、なかなか面白いメンバーになったかと思います。

個人的には大ファンの池山隆寛さんを加えたかったですが、トリプルスリーの野村謙二郎さん、打点王の田中幸雄さん、二遊間守れる立浪和義さんらがいて、泣く泣く選外、リザーブに入れるという形になりました。

皆さんならどんな選手を選びますか?
また機会があれば妄想シリーズ、書いてみたいと思います。

併せてこちらの記事もご覧ください。

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